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REVIEW|2020 FINALLY STARTED -PART2-

2020.10.20
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■ビジネスマンとプレーヤー|ふたつの顔を持つ及川啓史が遭遇したコロナ禍

SHINAGAWA CC WILDCATS.EXEの及川啓史は、スポーツアパレルのブランドマネージャーと、3x3プレーヤーのふたつの顔を持つ。彼にはビジネス、プレーヤーとしての両面にコロナの影響が大きく及んだ。
「僕らはスポーツのアパレルを作っているのですが、緊急事態宣言中にユニホームなんてだれも買わないですよね。売り上げが落ちてきたときに、なにかやれることはないかと考えました。その時期はマスクが手に入らず、あったとしてもすごく高額だったんです」

及川のビジネスの背景には生地を扱っていて、付き合いがある工場が海外にいくつかあった。
「そこを活用して、スポーツ用のマスクがあってもいいかなと。僕らのブランドから、低価格でマスクを出せれば、困っている人たちを助けられたりするかもしれない。そのくらいの感覚でしたね。それからは自分でマスクの形に布を切って、ミシンで縫い合わせたりしながら、型紙を作っていきました。工場には困っている会社さんがいたら、この型紙を自由に使ってもらっていいよと言って進めたら、あれよあれよと言う間にすごく人気になってくれた。決して、なにかをねらった動きではなかったんですけどね」

商売の売り上げを立てるというより、社会に還元する気持ちで行動したのかと問うと、彼は真っ正直にこう答えた。
「正確に言うと社会に還元するというよりも、僕が早くバスケがしたいから、みんなマスクつけてって(笑)。しかもカラフルで何でも選べる状態にするから、みんなで頑張ろう。それで『早くオレにバスケをさせてくれ』みたいな思いでした。販売を始めてからはいろんな方々から感謝の言葉や、DMなどをいただくようになりました。僕らのマスクは通気性がめちゃくちゃいいので、アトピーをお持ちの方に『このマスクは汗ばまないから、肌荒れがなくなった。ありがとうございます』との連絡もいただきました。自分のためにやっていたつもりだったのが、意外といろんな方の支えになっていた。結果論にはなりますけど走って良かったなと、そう思います」

バスケットボールに関してはチームは普段、公共の体育館を借りて活動しているため、練習は一切できなかった。
「緊急事態宣言中を含め2~3ヶ月近く、身体を動かせていませんでした。スポーツを始めてから、あれほど動かなかった期間は初めてでしたよ。練習を再開させたときは、めちゃめちゃきつかったです。2ヶ月休んでいる間に落ちた体力が、4ヶ月以上かけてやっと少し戻ってきた感じです」

コンディションが整わなかったゆえか、及川のSHINAGAWA CC WILDCATS.EXEは初戦でTOKYO CRAYON.EXEに14-21で敗れた。悔しいには違いない。なのに目の前にいる男の表情は、晴れ晴れとしている。
「負けてめちゃくちゃ悔しいという気持ち自体も、楽しいというか。こんなにいい歳の大人になって感情が揺さぶられることって、普通に生きていたらないはずなので。そのなかで勝ったら嬉しい、負けたら話もしたくないほど悔しい。そうやって自分の気持ちを大きく揺さぶってくれるような世界に身を置けて、そのなかでいろんな人たちと切磋琢磨できているのは、すごく貴重だなと思っています」

まだ完全ではないが、バスケがある日常が戻りつつある。
「いやぁ、コロナの騒ぎで世の中が止まっていたころとは、全然違いますよ。生きてるって感じがしますよね」


■3x3日本代表候補にしてBリーガー|落合知也が体感した新しい3x3

TOKYO DIME.EXEの落合知也は、国内ランキング1位の3x3日本代表候補であり、5人制ではBリーグの越谷アルファーズにも所属する2WAYプレーヤー。前日と前々日に越谷でB2のリーグ戦でプレーし、そのまま続いて今大会に出場した。

「金曜と土曜はBリーグの試合に出て、日曜は3x3の試合に出る。最近は、これが日常ですね。根本的に僕は3x3からバスケットボール選手として形成されたと思っていますし、3x3ありきの自分だと思っています。だからまず、ここはおろそかにしたくない。だけどBリーグにチャレンジしている以上、両立したい思いもある。チームの理解とサポートもあって、どちらもやらせてもらっています。日本でこういうチャレンジをしている選手って、僕以外にいないじゃないですか。だからこそやりがいがあるし、チャレンジのしがいがある。すごく楽しくやらせてもらっています」

新型コロナの影響でBリーグは3月に、続いて3x3.EXE PREMIERもシーズンの中止を決定した。しかしBリーグは2020-21シーズンを10月に開幕し、PREMIERもこうしてトーナメントの大会を開催。日本のバスケは、再び動き始めた。とはいえ、コロナは完全に収束したわけではない。こんな状況下で大会を開くことについて、プレーヤーである彼はこう語る。

「ほかの3x3も大会がない状況で、このような大会を開催してくれた3x3.EXE PREMIERには、すごく感謝しています。なおかつ、スポンサードしてくれているサンクロレラさんのサポートがあってできている大会なので、そこにも感謝します。無観客とはいえプレーグラウンドが作られるのは、選手にとってもすごく良いこと。なのでこれはぜひ、続けていってもらいたいです。今は配信のみになっていますが、選手はパフォーマンスを上げて、良いプレーを見せるだけですね」

今大会は無観客で、試合の模様は配信のみ。通常ならざる状況下での開催は、選手にどんな影響を与えたのか。

「僕は正直、無観客だとあまり燃えないタイプなので(笑)、少し難しい部分がありましたね。グリーンバックに囲まれてプレーするのも、シュートが遠く感じたりとかして、ちょっと変な感覚がありました。だけど、久々に大会形式でプレーできて良かったです、本当に。こういうプレーグラウンドがあることには、感謝しかありません。選手が今、もっとも求めているのはプレーする機会。それが作られただけでも、ありがたいですね」

新型コロナを経験して自分のなかでなにかが変わったり、新しい価値観を得たことはあるか。そう問うと、つねに前向きな男らしい応えが帰ってきた。

「やっぱり自分はバスケットボールがないと、なにもできないんだなという気持ちになりました。僕はバスケットボールをプレーしないで、なにを世間に伝えられるか。時間があったのでそれをじっくりと考えて、自粛期間中にインスタライブやYouTubeのライブ配信などで、ファンの方やいろんな人々と交流できる機会が作れました。そういった交流の仕方は今までのシーズン中はなかったので、新しい発見でしたね。それにこの大会も配信されているので、こうやってプレーしている姿が世界中に見てもらえる。そういった意味では、本当にチャンスですよね。グローバルなチャンスもつかめると思うし、僕はそこにもやりがいを感じています」

今大会の準決勝となったSIMON.EXE戦は、15-15でオーバータイムに突入する接戦。落合はオーバータイムの最初のプレーで見事に2Pシュートを射貫き、チームを決勝に導いた。チャンピオンの称号をかけた決勝戦は、ともに優勝候補にあげられたTOKYO CRAYON.EXEと熱戦を繰り広げたが、15-20で敗戦。王座は目の前で、掌からこぼれ落ちた。

「普段と違う環境なので難しかった部分がありましたけど、そのなかでも優勝するのは1チームだけですし、最後に勝っているチームが強い。そこは素直に、TOKYO CRAYON.EXEをリスペクトします。バスケットボールをプレーするのは、僕らがやらないといけないことですし、やりたくてやっている。今は通常と同じ形での開催は難しいでしょうが、それでもやり続けて、いつか平和な日常が戻ってきたときに、みんながストレスなく楽しめるようになればいいなと思っています」

それでもやり続けて、前に進む。バスケを、そして日本はもちろん、リーグ加盟国・地域など、世界の3x3を止めてはならない──。

(Text by カワサキマサシ)

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