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REVIEW|WOMEN’S CATEGORY STARTED -PART2-

2020.12.01
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■不完全燃焼でWJBLから引退。舞台を変えてコートに戻ってきた小池真理子の思い

続く第2戦はSIMON.EXEと、TOKYO DIME.EXEが対戦。試合は残り0分09秒でTOKYO DIME.EXEの小池真理子が2Pシュートを決めて同点に追いついたが、同0分0.4秒に痛恨のファウルでフリースローを与えてしまう。これを2本とも決められ、優勝候補の一角に上げられていたTOKYO DIME.EXEは、15-17と初戦で大会を去ることになってしまった。

一時は値千金となる2Pを決めた小池は、CHIBA BEX.EXEの長部と同じく、かつてのWJBLプレーヤー。現役時代は強豪のトヨタ自動車アンテロープスに所属したが、ケガの影響もあってわずか3シーズンで引退した。

「引退してから3~4年は、ボールをほぼ触っていませんでした。引退して体重が増えてしまったこともあって、なにか運動しようと思ってジムにいったり、外を走ったりしていましたが、全然面白くなかったんですよ。そのころ友達に遊びのバスケをやらないかと誘われて、遊びならいいかと思って、軽く身体を動かす程度のバスケをやり始めたんです」

5人制の現役時代は、バスケ漬けの日々。そこから開放され、最初の数年は自由を謳歌した。だがやがて「これが、自分のやりたかったことなのか」との疑問が胸の内に湧き、同時に心にぽっかりと穴が空いていることに気付く。

「厳しい世界にいたのに、急になんのストレスもプレッシャーもない生活に戻って、物足りなさがあったんですよね。遊びのバスケを始めてから1年後くらいに3x3の話が来て、やってみようかと思いました。ブランクの影響やケガのリスクも考えましたが、もう1回チャレンジしたい気持ちのほうが大きかったんです」

そうして引退から5年後に、3x3.EXE PREMIERで現役復帰。2018年にスタートした女子カテゴリーに初年度から参戦するパイオニアのひとりが、身をもって体感している女子の競技力向上ぶりをこう語る。

「初年度はどこのチームも探り探りというか、まず『3x3とはなんぞや!?』というところから入っていましたね。今思えばみんな、3x3を理解していないまま競技していた。だけど2、3年目と経験を重ねてきて、レベルは確実に上がってきていますよ」

彼女も平日は会社員としてフルタイムで働き、勤務終了後にチーム練習や個人トレーニングに励む日々。緊急事態宣言が出された際は仕事はテレワークになり、身体も満足に動かせなかった。

「私は人と会いたいタイプなので、家で1日中パソコンと向き合っている生活は限界でした(苦笑)。昼間は暑いので夜に走りに行ったりしていましたが、やっぱりバスケをする体力って、ただ走ればキープできるものではないんですよね。2ヶ月バスケができなくて、練習ができるようになってからも全然体力が戻らず、最初の1ヵ月くらいは焦りを感じていました」

コロナ禍にあって、いつバスケがプレーできるかわからない毎日。それは彼女がコートを離れていた5年間より、長かったかもしれない。そしてようやく、こうしてコートで思う存分プレーできる機会が訪れた。

「この約半年間は、コロナ禍で試合ができるかわからないなかで過ごしていました。本来ならお客さんの前でプレーするほうが、選手としてもテンションが上がります。だけど、たとえ映像でも実際のプレーを見てもらえるのはうれしい。今はこういう状況なので、それでも配信という形でCGを使ったり、ファンの方に見ていただける機会を作っていただいたことは、選手としてありがたいです。感謝しかありません」

不完全燃焼の思いを抱えながら、一度はバッシュを脱いだ。しばらくの時を経て再びコートに戻ると、ここが自分の居場所なんだとあらためて気付いた。勝ち負けに心動かされる日常が、小池真理子に戻ってきた。

「それが今の自分にとって、とても大きいですね。感情の波って落ちているときは苦しいし、しんどいです。でもまったくなにもなかった4~5年前を考えると、今は日々にうれしい、悔しいの感情がある。それがあるから、今の自分はすごく充実していると思えるんです」


■児童の発達支援をしながら3x3参戦。齋藤桃子がリモートマッチで得たもの

BEEFMAN.EXEとSIMON.EXEの顔合わせとなった決勝戦は、序盤からBEEFMAN.EXEが先行すると、そのまま相手を寄せ付けることなく19-6で勝利。優勝候補にあげられていた強豪が、今大会最多得点差をつけるゲームで頂点に立った。

惜しくも優勝を逃したSIMON.EXEの中心選手は、昨シーズンの得点王であり、MIPも獲得した齋藤桃子。彼女は普段、児童発達支援関連の仕事に従事している。

「ここ最近になって聞かれるようになった、発達障害といわれているお子さんたちが、生きやすくなるために支援するお仕事をさせていただいています。具体的には、その子の特性をどうカバーしていくかや、特性に合わせてどんな支援ができるのか。また、その子自身に自分の特性を受け入れてもらい、そのままでも大丈夫だけど、より生きやすくするためには、プラスアルファでどんなスキルを身につけていけばいいのか。そういったことを、支援する内容です」

日常から子どもと接するゆえ、なおさら新型コロナについては神経を尖らせた。

「緊急事態宣言中は、国から『いつもより、なるべく子どもを受け入れてください』という指示もあったので、私たちの事業所は通常通りに業務を行っていて、子どもがたくさん来てくれていました。そんななかで変わらず通勤を続けていたので、心の隅では心配もありながら、仕事をしていましたね」

3x3.EXE PREMIERは、今季のリーグ戦の中止を6月に発表。齋藤は自身の立場と重ね合わせながら、それはやむなしだと受け入れた。

「感染のリスクがある状況で無理やりに開催すると、自分が知らないあいだに感染していて広めてしまう可能性もあれば、うつされてしまう可能性もある。その心配な気持ちを抱えながらやるのは、すごく複雑な心境かなと思っていました。早めに中止になって切り替える時間があったので、それは良かったかな」

コロナ禍に襲われるまでは少なくても週に4~5回、シーズン中は時間がある限り毎日のようにどこかでバスケをしていた。しかし世の中の動きが止まり、その機会が失われる。

「コロナの第一波の時期は、身体を動かしたいのに動ける場所がなくなったのが、いちばん困りました。日常の半分が抜け落ちたかのような、自分のなかでは本当にそのような感覚でしたね」

第一波の波が落ち着いた6月に、トーナメント形式でのカップ戦の開催が決定。通常開催のスタイルをよく知るだけに、今回の無観客によるリモートマッチには、不思議な感覚を禁じ得なかったという。

「3x3.EXE PREMIERは屋外や商業施設のなかなどで開催されてきて、応援してくださる方との距離が近いのが、素敵なところだなと思っていました。試合中も声をかけてくれたり、終わったあとに知らない方から声をかけられたり。普段感じるようなことがないことなので、それがうれしいんです。そういう雰囲気のなかでやってきたので今日は正直、すごく不思議な感覚はありましたね。だけどこののような状況でも大会を開催してくれるので、すごく楽しみにしていましたし、今はありがたい気持ちです」

目前で優勝を逃し、悔しいに違いないであろうに、目の前で話す彼女はどの言葉も清々しく紡ぐ。それが生来の姿であると同時に、バスケができるよろこびが、彼女をなおさらそうさせているのだろう。

「今回の大会が開催されるとなったときも、SNSとかで多くの連絡をいただいたり、『無観客だけど応援してます』などと連絡をいただきました。見には来れなくても、本当にいろんな人が応援してくれていることが伝わってきたんですよ。みなさんの声を直接は聞けませんが、つながっていることを実感できた。無観客だったけど、温かい空気を感じながら試合ができました」


■名門校で実績を残すも一度はコートを離れた桂葵が楽しみにする3x3のこれから

今大会のMIPに選出されたのは、BEEFMAN.EXEを優勝に導いた原動力のひとりである桂葵。彼女は桜花学園高で全国制覇、早稲田大4年次にインカレ優勝と名門校で実績を残しながら、大学卒業後はバスケを離れて大手商社に就職する道を選んだ。

「バスケは大好きだったんですけど正直、バスケ界で選手として出会える人たちには、もう出会い尽くした。そう感じていたし、ビジネスの道での挑戦もしてみたかったんです。バスケは好きだけど、違う世界も見てみたい。新しい出会いを求めてみようという思いで辞めました。新しい出会いがないと、新しい価値観にも出会えません。バスケ選手としての成長よりも、人として面白い人に出会いたいなと思って一度離れたんです」

新しい世界も、刺激的な毎日だった。だが出会い尽くしたと思っていたはずのバスケ界には、彼女が知らなかった人たちがいた。新しい出会いは、自身を成長させていく栄養剤だと彼女は言う。

「3x3という新しい競技ができて、それを通じて全然知らなかったストリートバスケの人たちに会ったりと、そういう新しい出会いが社会人4年目のときにあったんです。バスケ界にはまだまだ自分が知らない価値観を持った、面白い人たちがたくさんいる。全然、出会い尽くしていなかった。今はそれが面白くて、3x3をプレーしています。自分の固定概念をぶち壊してくれるような人たちとの出会いが楽しいし、好き。それはバスケだけではなく、人生においてというと壮大ですが、いつもそれを求めている気がします」

3x3.EXE PREMIERへは、女子カテゴリーが創設された初年度から参戦。先に紹介したTOKYO DIME.EXEの小池真理子とともにパイオニアのひとりである彼女が、現在の状況下で、大会を無観客のリモートマッチで行う意義について語る。

「私はポジティヴでも、ネガティヴでもないです。たとえばリスクとして、ここでクラスターが発生する可能性はゼロではありません。コロナが怖いから参戦しないのもひとつの決断だと思うし、今日来ている人たちはそのリスクも理解したうえで参戦している。様々な情報が飛び交っていて、(医療関係の)プロフェッショナルの人たちのあいだにも、いろんな意見があります。それらを含めて、選手自身はどう判断するのか。その選択は、それぞれがすればいい。リスクを理解したうえで、今回のように対策をしっかりしてくださって、選択を我々参加者に委ねてくれた運営側には、すごく感謝しています」

一流選手だったキャリアを捨て、ビジネスの世界に飛び込んだ。そして今はビジネスと並行しながら、また新しいバスケの世界にも身を置く。彼女は新たな世界に積極的に飛び込み、そこで刺激を得て自らを成長させていく。

「今3x3をやっている理由のひとつが、新しいスポーツが作られていく過程が見られること。それが、すごく面白いなと思っているんです。FIBAからルール変更がトップダウンであったりすると『FIBAは3x3を、こういうスポーツに作っていきたいのかな』などと想像したりします。それに立ち合えて、3x3の歴史を見られているのはいるのは、すごく面白いです」

3x3という競技も、3x3.EXE PREMIERという大会も、彼女が関わっているあいだに、また新しい形に変化するかもしれない。

「それも楽しみですし、3x3や3x3.EXE PREMIEが今後どうなっていくのかを、すごく面白がれている。新しいスポーツが形作られている過程に関われていて、面白さを確信しているからこそ、伝えていきたい気持ちがすごくあります。それに3x3という競技自体も、バスケ界と関係がない人たちに見てもらっても、面白いスポーツだと思う。みんながもっと興味を持ってくれたら、うれしいですね」

11月下旬になって、新型コロナの感染流行は第三波のフェーズに入った。未知のウイルスとの戦いは依然、予断を許さない。だが3x3.EXE PREMIERは感染予防対策を万全に施した舞台を準備し、ここに紹介した女子プレーヤーたちをはじめ、バスケを、そして3x3を愛する者たちの情熱の炎を消させはしない。

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