3x3.EXE PREMIER JAPANには今季、男女あわせて10チームが新規参入します。本企画は新規参入チームのオーナーに参入の背景、クラブが目指すものなどを語ってもらい、新たに3x3.EXE PREMIER JAPANに加わる仲間を紹介するシリーズ連載です。
第9回は「3x3から介護を身近なものに」をチームスローガンに掲げて、WOMEN'S カテゴリーに参戦するG FLOW.EXEの城崎永一郎オーナーに、なぜ介護と3x3が結びついたのかなどを伺いました。

G FLOW.EXEが活動を通じて目指すのは
介護サービスの周知と、若い世代の就労促進

G FLOW.EXEのオーナー企業は、横浜市で訪問看護事業を展開している株式会社NEXT FLOW。「3x3から介護をより身近なものに」をチームスローガンに掲げ、今季から3x3.EXE PREMIERのWOMEN'Sカテゴリーに参戦を開始する。一般的に考えても、介護と3x3が一直線に結びつくイメージは湧かないだろう。訪問看護と介護の事業者は、なぜ3x3のプロリーグ参入へと舵を切ったのか。株式会社NEXT FLOWの代表取締役で、G FLOW.EXEのオーナーである城崎永一郎氏が、その胸のうちを明かす。

「今の介護業界は、さまざまな問題を抱えています。まずは私たちが行っている訪問看護や介護サービス自体を、世の中のみなさんがまだきちんと理解していない。それと、人手不足ですね。介護の仕事というと、どうしてもダサいとか汚いとか、そういったイメージを持たれがちなんです。もちろんそれだけが理由ではないですが、若い年齢の方がこの業界に飛び込もうという流れが、まだ足りないのかなと思っています。

そこで若い世代にも人気がある3x3でプロチームを作り、このチームを活用してもっと介護をだれもが身近に感じ、介護が必要となった際に困らない世の中を作りたい。そういった思いから、チーム設立を決断しました」

高齢化社会に突入した日本において、介護事業は今後必ず必要になるサービスであり、ニーズが高まることは容易に想像できる。だが城崎オーナーが話したように、現時点でそのサービスの内容をどこまで正しく理解しているかと問われれば、多くの人が答えに窮するのではないだろうか。

「それが、G FLOW.EXEの設立の理由でもあります。介護という言葉を知っている方は多いと思うのですが、具体的にどんなサービスがあって、介護者はどういう人が来てくれるのか。利用するには、どのような手続きが必要なのか。そういうところまで把握できている方は、非常に少ないと思います。それをもっと世の中に広めていきたい思いが僕にはあって、このG FLOW.EXEというプロチームを持つことで、影響力も兼ね備えたいなと考えました」

G FLOW.EXEが活動を通じて目指すのは一般への介護サービスの周知と、とくに若い世代の介護職への就労促進。

「はい。その、どちらもですね。G FLOW.EXEが果たすべきは、その両者を促す宣伝塔のような役割です。就労の部分で言いますと、僕たちの株式会社NEXT FLOWは平均年齢が非常に若くて、30代前半ぐらいです。一方で介護業界の平均値は、40~50歳くらいの世代がとても多いんです。

その理由としては、SNSに力を入れて取り組んでいるので、そのあたりでも若い世代にアピールできているのかなと思います。とはいえまだまだなので、もっと広げていきたい。介護の会社でもこういうプロチームを持てて、運営できるんだということを知ってもらえると、若い人たちに向けてちょっとは刺激になるのかなと思っています。3x3は若い観客が多いので、僕たちのメッセージが届くんじゃないかと、大いに期待しています」

城崎オーナーはバスケットボール経験者ではなく、3x3という競技の存在は知っていたが、注目を高めたのは東京五輪以降だという。プロチームを作るのは、もちろん初めての経験。

「いやもう、チーム作りは本当に大変です。未経験で、やったことがないことばっかりですから(苦笑)。今は集まりましたが、まず選手を集めるのもすごく大変でしたし、練習場所を探すのもとても大変。だけどまったくなにもないところから始めて、少しずつ形になっていく様を体験できるのは、面白くもありますね」

今後は選手たちに、介護の現場を体験してもらうことも考えていると城崎オーナー。

「やはり介護の現場を知っていただくことは、大事だと思います。選手が介護の現場のことを知らないと、発信もできませんから。なので選手たちには、ぜひ僕たちの職場に来ていただき、実際にどういったことをしているのかを感じていただいて、選手たちからも発信していただきたい。これはチームの目的として、大事なことだと思います」

本業が介護事業ということもあり、選手たちにはバスケの能力だけではなく、人間性も求めた。

「僕のなかではどちらかといえば、人間性の方を少し重要視している感覚もあります。介護や看護は人と触れ合っていくサービスですので、選手たちの人となりや性格はとても大事にしています。お陰様で選手たちは、本当にいい方たちばかりが集まってくれました」

人間性に軸足を置いて選手を集めながらも、競技力をまったく置き去りにしたわけではない。城崎オーナーはG FLOW.EXEに集まったメンバーに、手応えを得ていると言う。

「いい選手たちが集まってきてくれたと思うので、もしかすると優勝できちゃうかもなって、ちょっと……(笑)。勝負事ですし、やっぱり負けて欲しくないので、結果にもこだわります。参入初年度で生意気かもしれませんが、優勝を目指します(笑)」

優勝を目指すと言いつつも、やはり1年生チームならではの苦労は絶えない。

「当面の目標は本当に短期的ですが、まずこの初年度はちゃんと試合に出ることです。さっきお話したように練習場所がどうとか、まだそんなところでつまずいてるようなレベルなので。そういったことをクリアして、選手に練習できる環境を作って、試合に出ることが目標ですね。

この初年度を乗り切って、そのうえで2年目、3年目と、きちんと活動を続けられる体制を整える。初年度だけで終わってしまうと、僕たちが掲げているビジョンを達成できずに終わってしまうので、継続できるように頑張ろうと思っています」

掲げた目標に達するためには、チームの活動を継続させねばならない。そのことを城崎オーナーは、しかと自覚している。そうして継続したその先に、どんな化学反応が生まれるのか興味深いところだ。

「私たち株式会社NEXT FLOWの主軸は訪問看護、介護ですので、3x3を通じて地域との結びつきをより深くしたい。現時点でそれが具体的にどんなものかを言葉にするのは難しいのですが、プロバスケットチームと介護がかけ合わさると、こういうものが生まれるんだというものを作っていきたいです。G FLOW.EXEを通じてそういった活動をしていきますので、今後はそのあたりにも注目していただきたいですね」

前例のない介護と3x3を結びつけるG FLOW.EXEの活動が、どんな実を結ぶのか。注意深く見届ける価値は、充分にある。

(Text by カワサキマサシ)

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