2022年は6つのチームが大会を誘致し、ホームゲームを通じて競技の認知拡大をはじめ地域活性化や新たなコミュニティを創造しました。3x3.EXE PREMIERの特徴でもありますが、駅前や街中、商業施設などの省スペースにコート・ゴールを設置するだけで大会を開催できるため、大会誘致はさまざまな可能性を秘めていると言えるでしょう。

本企画は2022年シーズンで大会誘致を実施したチームオーナーに、大会誘致にかけた想いや背景を含め、2022年シーズン全体を総括いただく内容です。

全7回でお送りするシリーズ第1弾は、広島県広島市を本拠地として構える『3STORM HIROSHIMA.EXE(以下「3STORM」)』。地元・広島県呉市と、隣県・山口県宇部市での2回、大会誘致を成功させた代表取締役兼チームオーナーの仲摩 匠平(なかま しょうへい)氏の狙いとは。

広島県のチームが山口県で大会誘致
リーグ創設史上初、本拠地以外での開催を実現できた裏側

広島県にはNPB『広島カープ』を筆頭に、Jリーグ『サンフレッチェ広島』、Bリーグ『広島ドラゴンフライズ』、Vリーグ『JTサンダーズ広島』など名だたるプロスポーツチームが存在する。県をあげて「スポーツで街を盛り上げる」という文化が根付いているが故に大変なこともあったと、仲摩氏は話してくれた。

仲摩「それこそ設立当初は非常に苦労しました。選手を引退してすぐ経営に回って、右も左もわからない状況で、かつ東京オリンピック前で3人制バスケットボールという競技を誰も知らない。営業回りをしても、たとえば「既に他スポーツチームに出資しているから」と、興味を持っていただくことさえも難しかったですね。

だからこそまずは「3人制バスケットを見てもらおう」と、1年目から誘致に動きました。全てが初めてでしたから、1年目はとても大変でしたけど……(笑)。なんとかシーズンを終えられて「よし、この経験を2年目で活かして頑張るぞ」と思っていた矢先に、2020年は新型コロナウイルスの影響で全日程中止になってしまい、チームとしての活動ができなくなってしまったんです」

@2021年にはベストオーナー賞も受賞した、代表取締役兼チームオーナーの仲摩匠平氏

一瞬曇った表情を見せたが、新型コロナウイルスの影響でチーム活動がストップしてしまった2020、2021年を、仲摩氏は笑顔で振り返る。

仲摩「それこそコロナ前は、他社のやり方を参考にしながら『プロスポーツチーム』として活動してきたのですが、営業回りを通じてそれだけでは生き残れないことを痛感しました。そんなことを感じていた最中での全日程中止。そのことを聞いた時には「この先どうしたらいいのだろう…」と頭を抱えましたが、悩んだところで結果は変わりません。すぐに切り替えて、その時自分にできることを考えてみました。

チームとして活動できないのなら個人としての活動を主とするしかないと、ブログやSNSを、毎日投稿することにしました。クヨクヨして立ち止まっていても仕方ないなって(笑)」

「その日から1日1回は、『3STORM』というチーム名や『仲摩匠平』という名前を、忘れられないためにも出していこう」と決めて投稿し続けたブログやSNSでの情報発信は、結果的に多くの問合せとなって返ってきた。

仲摩「非常に多くの反響があり、純粋に嬉しかったですね。ブログやSNSをキッカケに、多くの方と出会えましたから。その中の1人(宇部市のバスケットボール関係者)が、私と宇部市長を繋いでくださったんです。活動内容をお話すればすぐに「これは面白そうだね」と言ってくださいました。その場はご挨拶で終わったんですが、後日会食の機会があり再度お話をすると「来シーズンは是非大会を誘致しましょう!」と。そこから半年くらいで、宇部市での大会誘致が決まったんです。あのスピード感には本当に驚きました。1年ちょっと前には、宇部市とのつながりは全くありませんでしたから」

@Round7で大会誘致となった宇部市渡辺翁記念会館

リーグの歴史上、自チームの本拠地以外での誘致は初の事例。ただ筆者は、山口県宇部市に本拠地を置く山口ペイトリオッツが2021年にB3リーグへ参戦したことを鑑みて、今回の大会誘致は山口県や宇部市として、”バスケットボール”に注力していくための動きの1つだったのではないかと考えた。

仲摩「それももちろんありますが、”アーバンスポーツ”に興味を持っていただいたと感じています。私の提案に対して「3人制バスケットならではの地域活性ができる」「このお祭りとマッチングできる」などと、次に繋がるイメージができたから、すぐ行動もしていただけたと思います。そこはやはり、5人制バスケットとは違った見せ方ができる、箱を持たない3人制バスケット、アーバンスポーツならではの強みですよね」

3STORMの本拠地である広島ではもちろん、山口県宇部市でも、小学校単位のクリニックにはじまり、地域の各種イベント・お祭り事に顔を出し続けている。人との縁を大切に、屋外・少人数・省スペースという3人制の特性を最大限に活かしながら、オンライン・オフラインの二刀流で活動を止めなかった。

仲摩「僕らの本拠地は広島ですから「宇部市でお手伝いできることがあれば」という感覚で始めさせていただいたものの、県外のチームに関わらずあれだけの反響があったのは本当に嬉しかったですね。

ちなみに、ブログやSNSを通じて多くの方とお話をした際に「プロの試合を地元で開催できるのならしてみたいけど、誘致も開催も、何からどう始めればいいかわからない」という声が非常に多かったんです。チームがない県でも開催したい場所があることを知れたのは、新たな発見でした」

@興行以外の部分でも、さまざまなイベントを企画し盛り上がりを見せた

山口県宇部市と『3STORM』はその後、スポーツでまちのにぎわいを創出することを目的とした連携協定を締結。そして2022年9月には地元広島に『3STORM BASE(スリストムベース)』というレンタルコートをOPEN。次々と夢を形にしている一方、仲摩氏は自身のことを「勝算があって行動するタイプではなく、動いたことで選択肢をもつタイプ」と話す。加えて「ゼロイチは自分にはできない」と謙虚に語ってくれた。

仲摩「どうしても3人制バスケットは他のスポーツと露出度が違います。誘致をしたとしても地元での開催は年1回ですから、大会当日はもちろん、それ以外の364日をどんな見せ方にするか。「3人制バスケットというアーバンスポーツで街を盛り上げる」「レンタルコートを使って地域の方々のコミュニティを創造する」「スクール事業で子どもたちの未来を創る」といった、さまざまな角度から提案できるようになったので、やってきたことは間違いじゃなかったと感じてます。

加えて、私だけではなく、色んな方が手を差し伸べてくださったからこそ今があると思っているんです。宇部市とのつながりはもちろん、3STORM BASEも尺野さん(尺野 将太:元広島ドラゴンフライズHC)がご提案くださいました。そして2023シーズンは、広島県がアーバンスポーツの聖地にしようと考えている某所での大会誘致を申請しています。もしこの場所に誘致できるとなれば、本当に感慨深いものがあります」

@3STORM BASEのオープンセレモニー(チームHPから抜粋)

5期目となる2023シーズン。広島県がアーバンスポーツの聖地として狙いを定めている某所にて3x3.EXE PREMIERの大会誘致の実現が迫る『3STORM』は、その名の通り台風の目となるに違いない。

仲摩「宇部市での大会誘致では、『3STORM』のTシャツを着て応援してくださる子どもたちや一般の方も非常に多かったですし、3年ぶりの呉市中央公園での開催でも多くの方が観戦に来てくださって、その光景は本当に感動しました。

また、3x3はもちろんですが、年々広島県でアーバンスポーツの認知度が非常に上がってきたと感じています。私自身も3人制バスケットに関わってまだ数年で勉強不足なところもありますが、2023シーズンはチームを強くすることはもちろん、会社ももっと強化していきたい。焦らずに、色んな人の話を聞きながら、自分も経験しながら、強さと優しさを兼ね備えたチームとして、地域に根差していきたいです」

ゼロがイチになるキッカケを作れたのは、ブログやSNSをはじめとする地道な草の根活動に他ならない。5期目となる2023シーズン、コツコツ蒔いてきた種が、広島の聖地にどんな花を咲かせてくれるのか。

@Round3で大会誘致となった呉市中央公園。3年ぶりの開催に関わらず多くの人が訪れた

◤TEAM information◢

Team:3STORM HIROSHIMA.EXE
Since:2019
Hometown:広島県広島市
SNS:
(Twitter)https://twitter.com/3STORM3x3
(公式サイト)https://3storm.co.jp/
(仲摩代表のブログ)https://ameblo.jp/n-shohei/

◤大会誘致に関するお問合せはこちら◢

premier@exebasketball.com

(Text by コバヤシ ワタル)